はりあん通信

コラム

   
妊活
2017.10.12
”妊娠率”とその利用方法について

 不妊治療に興味がある方なら、"妊娠率"って一度は聞いたことがあると思いますし、なんとなく気になりますよね。

 ところでどのように算出するか考えたことはありますか?

 詳しくは知らなくても、漠然と"妊娠率"が高ければ、妊娠しやすい。=(イコール)良いことだ。みたいな認識ではないでしょうか? 間違えではないのですが、利用方法によっては判断を誤ってしまいます。

 今回、"妊娠率"の利用方法について、秋の学会でも取り上げられたのですが、学会での結論

妊娠率では、各病院や医療機関の比較をすることは、かなり難しい

 です。

 "妊娠率"は、他の病院や治療院と比較する材料としてふさわしくないわけですから、多くの病院や施設が"妊娠率"を積極的に公表しない理由がそこにあると推測できます。

 なぜで"妊娠率"では医療機関の比較をすることが難しい(=ふさわしくない)のでしょうか?今回難しい話は控えますが、たとえ話で少しでもイメージが伝わるようにがんばってみます。


 例えば、マラソン選手の優秀さを比較する場合、オリンピックで150人中10位の成績と、市民マラソン1万人中の3位の成績では、どちらのランナーが優秀でしょうか?

 単純に10位より3位が優秀だと考える人は少ないでしょう。

 市民マラソンの1万人中の3位も凄いと思いますが、多くの方がオリンピック10位の方が優秀なのでは?と思うのではないでしょうか。それはなぜでしょうか?

 オリンピックの方が有名だからでしょうか? 威厳があるからでしょうか?歴史があるからでしょうか? 

 多くの人がオリンピック10位の方が優秀だと考えるのは、有名・無名、威厳や歴史ではなく、予選を勝ち抜いて出場できるオリンピックの方が、エントリーしている参加者の質が高いから、オリンピック10位の方が優秀だと考えるのだと思いますし、その考え方は誤りではないと思います。

 では、オリンピックで150人中の100位の成績と市民マラソン1万人中の3位の成績ではどうでしょうか?

 更に比較するのが難しくなりますが、ご存知の通り、マラソンにはタイムがあるので何とか比較することができます。

 参考までに似た大会のタイムを比較すると、今年の新潟マラソンのフルの参加者が約9千人で、3位のタイムは"2時間32分13秒"です。(もの凄く速いですね!)リオ五輪の男子マラソンでは、155人中100位のタイムは2時間26分00秒です。

 つまりタイムで比較すれば、3位の人も速いのですが、150人中100位の人の方が、9千人中3位より5分以上速いわけですから、100位の方が優れていることになります。


 少し話をもどして、例えば、不妊に特化した病院の150件中100位の成績の病院と、単に婦人科病院1万件の中から選ばれた3位の成績の病院だったら、どちらが優秀な病院か、あなたは正確に比べられるでしょうか??

 1万件と聞けば、ほとんどの方が3位を選んでしまうのではないのでしょうか。しかし実際にはマラソンの例のように「エントリーしている参加者の質が異なる場合」では、順位では比較ができないのです。むしろ100位の方が優秀な場合ですらあるのです。


 では最後に、これを踏まえて"妊娠率"について考えてみるとどうでしょか?

 近くにある病院や治療院の"妊娠率"と、口コミなどで妊娠しにくい患者が集まる専門の病院や治療院の"妊娠率"を比較することで正しい判断ができるでしょうか?

 難しい患者さんが多いから、良い病院とは言えませんが、今までの説明を聞けば、エントリーする患者さんの状況が違い過ぎる場合、"妊娠率"だけでは単純に比較ができないのは理解できると思います。

 "妊娠率"が施設間の比較する材料としてふさわしくない最大の理由は、この患者のエントリーの質の違いです。

 ちなみに"妊娠率"は以下の方法で算出します。実にシンプルですが、その割にわかりにくです。この数字は"エントリー者の状況の違いで大きく変化します

妊娠率の求め方

 みなさんはどのように考えますか?



   
健康
2017.09.21
健康診断の話

 今回は健康診断について。

 ほとんどの方は、毎年、健康診断を受けていると思いますが、「この健康診断でどの程度リスクを回避できているのか?」と疑問をもっている方も少なくないと思います。

 実は私もその一人です。私事で恐縮ですが、私は既に両親をがんで亡くしており、2人に1人はがんで亡くなる時代ですから楽観的に考えても、私ががんになることは不可避であり、問題は、がんになるか?ならないか?ではなく、いつなるか?だと思っています。

 それだけに健康診断は、私にとっては重要なのですが、一口に健康診断と言っても、採血だけの簡単なものから一泊二日の人間ドックなどさまざまです。お金で健康は買えませんが、本音を言えば安く簡単に済ませたいところです。

 そこで参考にしていただきたいのが1冊目の本人間ドックの9割は間違い(幻冬舎新書)です。

 読んで頂くのが一番ですが、ものすごく簡単に言うと
『仮に健康診断でがんを見つけられても、治療ができない進行した段階で見つけても意味がない。5年生存率が低いがんの多くは、発見が難しい、もしくは発見が遅れるがん。よって早期発見できないような内容の健康診断を受けてもムダ!カメラ・CT・MRIを駆使して早期発見するのみ!』ということです。

 この本では5年生存率が低いがんの例として、膵臓がんを挙げています。確かに私の患者さんでも、偶然見つかった膵臓がんは、早期だったため20年以上も前に手術を受けて今でも元気で過ごしています。

 具体的にどんな検査を受けたほうが良いかは本で確認して下さい。


 さて2冊目の本「健康診断は受けてはいけない」はもっと過激です。

 この本も読んでいただいた方が良いですし、読まないと話を聞いただけでは理解できないと思います。でもとりあえず、私なりにまとめると
『近年、医学の進歩?検診の普及?によって多種のがんが健康診断で早期発見されてきている。しかし、早く発見しているにもかかわらず高齢化を差し引いても、”死亡率”にほとんど変化がなく横ばいになっている。

 つまり早く発見しても亡くなる人の数が減らないという事は、もともとがんには、”助かるがん”と”助からないがん”があって、今の医療では早期に発見しても結果は変わらない。ダメなものはダメ。なので、むしろ早く発見すると精神的・社会的にネガティブな影響を受けたり、治療や手術によって寿命を縮めることもある。なので健康診断なんて受けない方がいい』
という考え方です。

 検査には、マンモグラフィーや子宮頸がんの検査も含まれています。詳しくは本で確認して下さい。

 何れにしても本を読んでいて、書いてあることは理解はできるのですが、受け入れるのが難しい内容です。ましてや検診を受けないという行動に移すのはなかなかできません。現に私は来月、検診で胃カメラのみます…。(汗)

 
ただ、今回紹介した2冊の本に共通するのは、

『検診や検査の基準は、患者の予後よりも経済原理で動いていることも多いので、決して医者任せにしない、自分で調べて考えることが大事』という点で一致していると思いました。

 皆さんはどう思いますか?






   
妊活
2017.08.24
「体外受精などで”はり治療”が有効かも」という論文の話

 今回も妊活の話…。

 最近は、一昔前と比べて妊活鍼灸が浸透しており、多くの鍼灸院で当たり前のように不妊治療を行っています。

 当院が新潟で妊活鍼灸をはじめた10年前は今と環境が全く異なっており、当時『妊活に、はり治療が有効ですよ』 と言ってもなかなか信じてもらえませんでした。

 信じてもらうためには、客観性が必要でしたのでPubmedなどで論文を探しましたが、その頃は鍼灸の研究が今よりもずっと少なく、論文自体を探すのに苦労しました。

 妊活鍼灸が浸透してきた今、当院が『良い論文がありますよ』などとコラムで紹介する必要性もないような気がしますが、このような活動も大切だということで触れておきます。

 今回の論文はメタアナリシスです。メタアナリシスとは統計学的手法のひとつで、簡単にいうと、
『複数の論文や研究結果・研究データを集め、その研究データを更に計算・分析し結果を出し、その結果から新たに結論を出す手法』です。

 な、なんだか、ややここしいですね…。(汗)

 要するに、ひとつの論文だけで結論をだすのではなく、多くの研究データの結果を分析し直して結論を出すので、その結論は信頼性が高いとされています。

 今回はリンクだけしておきます。時間のあるときに内容をフォローしますね。

 で、今回のコラムで言いたいこと

論文からも『鍼灸は体外受精や顕微授精にも有効!
だから、信頼できる治療院を見つけて”はり・きゅう”を有効活用しよう!』
です。






 
妊活
2017.08.08
治療成績「出産した患者だけを抽出して分かること…」

 以前、当院の治療成績の数値化の話をしました。悩みながら参考になる指標がないか、色々とサイトを検索していたら、他の治療院で気になる指標を見つけました。

 その指標は「”妊娠した患者のみ”を集めて数値化」をしていました。

 面白いなぁと思った反面、この数字って意味あるのかなぁ~と少し考えてしまいました。

 で、結論から言えば、『これだけで妊娠を早めるとは言えないが、意味なくもない(理由は後述)』との結論で、当院も似たような数字を出してみることにしました。

 当院では「当院で妊娠かつ出産の確認ができた患者」を抽出しました。

 ただし、このデータの結果から分かることは条件付きで見方にも注意が必要です。少々長いのですが、その説明を表の後に加えています。必ず読んで下さい。

[鍼灸院が出産を知るのは意外に大変]
 妊娠すると来院されなくなる患者さんもたくさんいるので、病院ではない当院が出産まで確認することは、実はとっても大変です!
 再来院以外では、本人から電話・メール・手紙で直接連絡を頂くか、ご紹介の知り合いが来院されて間接的に出産の事実を知るかくらいしかないのです

 でも皆さんそこそこ報告して頂けるので、記録も取れるし私のモチベーションが上がる意味でも助かっています。
 連絡ありがとうございます!




妊活・治療成績
今回のデータ

 「当院で妊娠かつ出産の確認ができた患者」を下記方法で抽出。

 出産の確認ができた患者なので、現在妊娠中の患者さんは含めません。従って2016年9月から過去に順番に遡り、妊娠はしたが出産が不明(=連絡なし)と妊娠はしたが出産には至らなかったものはスキップして、出産が確認できた20件を確認順に並べました。(過去流産回数も載せました)

当院で妊娠かつ出産が確認できた患者



表を見る上での注意点を2つ
その1 最も大事なのは「出産」

 まずひとつ目。これは今回データに限りませんが、妊活は、とにかく”妊娠(率)”に目が行きがちですが、最も大事なのは”出産”です。

 年齢が若い場合、流産率も低いので、妊娠≒出産となり、”妊娠率”でもほぼ問題ありません。

 しかし年齢が上がると残念ながら妊娠の維持が難しくなり、40歳を超えると”妊娠”だけの情報ではあまり参考になりません

 学会では、『”治療と呼べる成績は43歳まで。治療上、43歳までが産める年で、44歳は妊娠しても産むのが難しい年”と患者さんに案内して下さい』と言っている先生もいらっしゃいます。

[43歳の妊娠は決してめずらしくない]
 意外に思われるかもしれませんが、43歳の陽性反応や妊娠は決してめずらしくありません。
 しかし、大切なのは陽性や妊娠ではなく、妊娠を維持して出産する、ママになることです。43歳を過ぎると、これが難しいのです。
 若い方は妊娠率を参考にしてもいいですが、40歳以上の患者さんは出産数や出生率を参考にすることをオススメします。

今回のでデータ抽出でも、44歳・45歳で妊娠した患者さんは他にもいましたが、残念ながら出産に至らず表に入れられませんでした。 次回こそは…。

その2 妊娠していない人を考慮すると数字は変わる

 次にふたつ目。妊娠・出産した人だけを集めたデータに意味があるのか?というそもそもの話。

 今回の結果は、出産できた患者20人の来院前の平均妊活期間が2.6年に対し、はり治療を受けた結果、平均5.2ヶ月で妊娠して、その後、流産せずに出産に至っているというものです。

 この結果だけを見ると何となく悪くない?と思われるかもしれません。

 しかし、もし仮に半年治療を受けて一度も妊娠しなかった患者が20人いたら? また、1-2回治療を受けてドロップアウトした患者が50人いたらどうなるでしょう? (実際1-2回でドロップアウトする方も多いです。たまにその後に妊娠・出産したとの報告も来ますが、ほとんどが結果不明です)

 妊娠していない方を考慮すると、この”5.2ヶ月”と言う数字は簡単に変化してしまいます。つまり、この”結果”から「一般に、はり治療を受けると妊娠を早めることに期待ができる」との”結論”には残念ながらなりません。

 では、この数字と結果には意味がないのでしょうか? 当院は一定の条件で意味があると考えています。

 それが今回「意味なくもない」と考えた理由で以下の通りです。

今回の結果から推測できること

 今回の結果は、「人工授精の治療期間の目安」に使われる数字に似ていると考えています。

 それは「人工授精で妊娠した患者を調べてみると、最初の半年(約6回の人工授精)で8割の患者に陽性反応がでる」という報告です。

 これはかなり知られている事実で、病院が人工授精から体外受精へステップアップする際に参考にしている数字だと思われます。

 つまりこれは妊娠しない原因(ボトルネック)が人工授精によって解消された方は、半年以内に結果が出ることを表しています。

 これを今回の当院のデータと照らし合わせて考えらる推測はこうです。

『妊娠しない原因(ボトルネック)が、体質や生活習慣などにあり、はり・きゅう治療によって緩和可能な場合、平均半年を目安に妊娠できる状態になる。更にその場合は、過去の妊活期間と病院の治療ステージはあまり関係がない』 とのことになります。

 一定の条件とは「ボトルネックが体質や生活習慣であり、はり・きゅう治療によって緩和可能な場合」ということです。

 皆さんは表を見てどのように考えましたか?




   
妊活
2017.08.04
50歳以上の方の出産数(出生数)、ご存知ですか?

 いつまで妊活を続けるかは非常に難しい問題です。

 当院では今のところ、いつまでが妥当かは判断していません。 しかし年齢が高い方の妊活継続は、月経や排卵があることが前提になると考えています。

 いずれにしても、実際に「どのくらいの年齢の方がどれだけ出産しているか?」という数字はひとつの目安になります。

 以下は厚生労働省サイトから人口動態調査の表を編集した「母親の年齢を5歳階級ごとに分類して出生数を表した」ものです。

母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数

 平成27年では45歳~49歳の方が1256人出産しています。表にはないのですが、その内、第一子が591人(47%)です。更に、50歳以上の方の出産は52人でその内、第一子は31人(60%)です。

これを多いと見るか?少ないと見るか? 皆さんはどう思われますか?

 ちなみに今日現在、当院に来院されている妊活が目的の患者さんで年齢が一番上の方は、48歳で複数いらっしゃいます。 (皆さん関東の病院で体外受精をされています)

 

   
健康
2017.07.29
[再確認] 食品によるコレステロールの摂取制限に関して

 治療中、食事についても質問されるので、簡単な栄養指導もしています。 会話の中で、タンパク質の摂取をすすめると

「お肉はどうもニガテて…」と言われることがあるので、

「魚とか豆、例えば大豆なら納豆、豆腐、枝豆など、あと卵なんかは簡単にタンパクが取れますよ」と言うと、
「卵はコレステロールが気になって…」と返される時があります。


 2年前に、健康な方であれば食品によるコレステロールの摂取制限はなっていますが、 あまり浸透していないようです。

 日本では2015年に、「健常者に限り」食品によるコレステロールの摂取制限がなくなりました。

 食事からのコレステロールは、体内で作られるコレステロールの 1/3~1/7 を占めるのに過ぎないことなどが根拠です。

 ただし、悪玉コレステロールと言われているLDLコレステロールが高かったり、動脈硬化による持病を持っている方は引き続き注意が必要です。  

詳しくは下記を参照して下さい。

チョットそれに関連して、当時の記事で面白いものを見つけました。
どうしてコレステロール摂取制限撤廃がなかなか浸透しないのか…。
あくまでも読み物として…。皆さんはどう思われますか?

 
妊活
2017.07.10
 妊娠率・出産率など治療成績の数値化の難しさ

 皆さんが、病気になって病院や治療院を選択しようと思ったら、治療成績や症例数などが気になりますよね。 私も同じです。
 不妊治療ならなおさらで、妊娠率・出産率(生産率)が比較できたら非常に便利ですよね。

 当院でもこれを公表して比較できたらいいなぁ~と思っているのですが、 いろいろな理由でなかなか難しく、結果的に公表に至っていません。

 以下は、言い訳のようになってしまいますがお時間があるようでしたら 続けて以下をお読み下さい。


 論文などに携わった方はご存知かと思いますが、 治療の効果の検証には、それ以外の治療の要素を可能な限り排除して、バイアスをなくした上で検証する必要があります。

 例えば、当院で妊娠していた人のほとんどが、病院に行っていたり、同時期にサプリを飲みはじめたら、何が理由で妊娠したかを特定するのは容易ではありません。

 そして実際に、不妊治療を目的に鍼灸院を利用する患者さんの多くが、 婦人科も併用しており、当院の患者さんがどれだけ妊娠したかを数値化しても、 その数値は、詰まる所、婦人科の数値に収束していくわけです。(併用の患者さんが増えれば増えるほど)

 では鍼灸の効果を見るにはどんな指標が良いでしょうか? 

 シンプルな指標としては、病院に通院している患者さんで「はり治療を併用している or していない」の成績を比較してみるのはわかりやすいと思います。

 移植に対する妊娠率や妊娠・出産までの期間の比較などです。

 ただ残念ながらこの比較には「はりに行っていない人」の数字が必要で、当院では調べられません。

 これ以外にも指標を作れないわけではないのですが、なかなかムズカシイのです…。詳しくはまた別の機会に…。

 それでも『キチンと比較できる数字でれば、出さないよりは、出した方が良いことは間違えない!!』ので現在思案中です…。